2011年3月18日 金曜日
温故知新 その11



企業の発展の基礎のひとつに、「その時代に応じた便利で有効なもの」に携わることがあると思います。


今の時代で言うと、コンピューター関連、いわゆるIT産業、半導体や電子部品に始まり、先端機能を搭載した家電、自動車産業等が挙げられ、世間の脚光を浴びています。


しかしその傍ら、それらの先端技術を支えてきた、職人技を要するいわゆる「ローテク」産業に陰りが見え始め、先般のリーマンショック時には多くの優秀な職人技を持つ中小零細企業が看板を下ろしました。


私のよく知る、金型工場もその荒波に耐え切れず、工場閉鎖を余儀なくされました。


その会社は、経験40年以上の職人さん数名で運営されておられ、数ミクロンの仕上げを指先の感覚で寸分の狂いも無く仕上げる技術や、機械加工では不可能な微細な加工を手作業で図面通りに仕上げる技術等を多数お持ちでした。


もし、この会社をもう一度、今から立ち上げようとしたら、恐らく50年以上の歳月が必要だと思います。


そんな貴重な企業が消えていくということは、大げさかもしれませんが国家的損失のように感じます。


目先の売り上げや利益がないと企業は存続できないことは明らかではありますが、この国全体が、もっと「古いものに敬意を払う」気質があれば、違った形でそれらの素晴らしい技術を後世に伝えていくことが出来たのかもしれないと思うと、無念でなりません。


戦後、資源の無い我が国が、世界に君臨できたのも「もの造り」をまじめにやってこられた先人達がいたからこそです。


今一度、「もの造り」に携わる我々は世界に誇れる国になるために、地道な努力を怠ってはいけません。