2013年1月7日 月曜日
温故知新 その46

最近の私の通勤の足は、1934年式のポンコツバイクだ。


一年ほど前にイギリスのネットオークションで見つけたものを輸入した。


どう見ても走るような気配すらないこのポンコツバイクを日本の公道で走らせて見たいと思った。


手元に来たときは、写真で見る以上に「こりゃ走れる代物ではないわ・・・」が第一印象だった。


ブレーキは利かない、ハンドルはガタガタ、タイヤはひび割れ、エンジンなどは言うまでもない。


キックを1000発蹴ろうが、うんともスンとも言わない。


しかし、今から約80年も前のイギリスの賢人達が創意工夫して作られたであろう風格と言うか


オーラだけはしっかり出ていたし、ましてやその賢人達に敬意を表する意味でも、しっかりと息吹を吹き込み、


80年前のようにしっかりと走らせないといけない!と言う義務感のようなものだけはしっかりと感じていた。


結果的に、ここから我慢の一年が始まった。


まずエンジンをばらすと意外と内側はしっかりしていた。覚悟していただけに宝くじに当たったような気分になった。


ミッションもばらし、電気系統も一からやり直し、欠品パーツをすべて整え、こつこつと、気の遠くなるような作業が


続いた。


それから一年、無事公道デビューを果たした。


このバイクはエンジン始動に関し、すこぶる苦労のいるバイクで有名なのだが、今では軽い振り下ろしキック数発で


元気良く鼓動を響かせる。


走りは?と言うと、ちょっとした道路のコブを踏んだだけで吹っ飛びそうになるし、クッションなんてあったもんじゃない、


シフトとブレーキが左右逆に付いていて、おまけにどちらも超硬い。


加速は原チャリに置いていかれるし、到底現代車と比較するもおかしな話なのだが、完敗・・・。


でも私がいつも感じながら走っているのは、「このバイクの数年前までみんな馬に乗ってた時代。馬から乗り換えた人達


さぞや感動の毎日だったんだろうなあ」。


そう言う思いで走るとやはり先人達のものづくりに賭ける熱き情熱のようなものが伝わってきて感慨無量になる。


エコとは真逆を行ってるのかもしれないが、古いものを大切にするという思想も今後の我々の生活の中に定着させて


いく必要もあるような気がする。


これでこのバイクは、もう20年は元気に走れると思う。20年後には「1世紀を走りぬいたバイク」として後世に伝えて


いけたら素晴らしいことだと思う。