プロトニクス研究所 新規開発技術
2011年3月8日 火曜日

 


カドミウムめっきは、他の金属皮膜と異なり、酸素と反応して皮膜を形成するという性質があることから酸化(腐食)に強く、同時に亜鉛と同様の犠牲防食アノード性によって、他に類を見ない耐食性を持った皮膜です。この性能によって、古くから自動車、船舶、航空機などの特に腐食しやすい部品に欠かせないものでした。                               しかし近年、カドミウムの有毒性は環境規制の対象となり、一部の限定された用途に限られてきました。さらに、最近では全廃の動きもあり、カドミウムめっきの代替として、他の皮膜が使用されるようになりましたが、特に耐食性が必要とされる船舶、航空宇宙産業、軍需産業などの一部の部品においては、それらの皮膜では要求を満たせないため、やむを得ず現在もカドミウムめっきが使用されています。                                           以上の経緯から、「カドミウムめっきの性能を上回る皮膜」の開発を目標に、弊社の研究開発が始まりました。


今回、「プロトニクスシステム タフテクト」の耐食性を評価する最終試験として、カドミウムめっきとの耐食性能比較試験を行いましたので、その結果を報告いたします。


 


 
・試験規格: JIS Z2371、JIS H8502 等


・試験方法:50℃に設定した試験槽に5%食塩水と0.027%塩化第二銅(二水和物)の混合液を噴霧する。


・試験材料:A2024BD


・試験皮膜:プロトニクスシステム タフテクト、カドミウムめっき


・試験時間:96時間


※試験後に純水にて洗浄済み



   プロトニクスシステム            カドミウムめっき            


         タフテクト



  プロトニクスシステム                  カドミウムめっき               


           タフテクト



   

     プロトニクスシステム           カドミウムめっき   


           タフテクト                

 



結果

 

・社内評価基準(※)において、 プロトニクスシステム タフテクト   評価 5


                       カドミウムめっき          評価 3


   ※表1参照


・カドミウムめっきにおいて、皮膜の割れは発生しませんでしたが、ピットコロージョン(点食)が数か所発生し、材料素地への腐食が確認されました。


 

結論

 

本評価試験において、カドミウムめっきとの比較で、「プロトニクスシステム タフテクト」が耐食性に優れている結果となりました。これは、耐食性に優れた皮膜が多層構造になっている事と、皮膜間での犠牲防食アノード性による相乗効果が、これまでにない高耐食性を実現したことによるものです。また、「プロトニクスシステム タフテクト」は環境規制に該当する有毒な金属を含んでおらず、環境規制に適合した皮膜です。


このように、「プロトニクスシステム タフテクト」は耐食性、環境適合性において、カドミウムめっきの代替皮膜として充分な性能を持つにいたりました。様々な環境下での実機試験の課題もありますが、お客様のニーズを追究し、さらなる性能向上に努めていきたいと考えております。 


 

2011年3月1日 火曜日



日々めまぐるしく進化する産業界の中で、営業の立場でお客様からの多種多様な表面処理のご相談を頂きます。


お客様のニーズを深く理解し、営業、製造、研究所が一体となり、ご満足頂ける表面処理技術を提供させて頂くことが我々の使命であります。


既存の保有技術で即座に対応させて頂くことが理想ですが、中には数年の歳月をかけ開発を行う場合もあります。


保有技術の中には、創業時から受け継いだ古い技術から最新の開発技術まで、多岐に渡りますが、それだけではすぐにご満足頂けるニーズにあった技術を提供することはできません。


また、できる限り環境付加の少ない処理技術の開発も、今後の課題であります。


このブログで紹介させて頂いている「タフテクト」は、カドミウムメッキの代替技術として開発されました。


のべ3000時間に渡る検証テストから生まれた新技術は、プロトニクス研究所の自信作です。


いよいよ試作段階に入りますが、ご興味がおありでしたら是非営業担当までお問い合わせください。



2011年2月22日 火曜日

CASS(キャス)試験は塩水噴霧試験の一種ですが、塩化ナトリウム溶液に、鉄より貴な金属である銅を添加することでイオン化傾向を高め、さらに試験機槽内の温度を50℃とする非常に厳しい促進試験です。(前回紹介した中性塩水噴霧試験の約10倍の促進効果があるといわれています。)


プロトニクスシステムタフテクトは、旧来からある技術と最新の技術を融合させた技術です。


この多層皮膜構造によって


1.高耐食性皮膜の多層化による耐食効果。


2.多層皮膜間の犠牲防食アノード性による耐食効果


という2つの相乗効果が、耐食性を飛躍的に向上させるのではないか?という仮説をたてました。その結果、中性塩水噴霧試験は良好な結果を得ました。そしてさらに細部にわたる改良と評価試験を繰り返した結果、皮膜構造の異なる2種類の皮膜に絞り込みました。


今回は、最終選考評価試験として、この2種類のCASS試験の結果を報告します。


 

・試験規格:JIS Z2371,JIS H8502 等


・試験方法:50℃に設定した試験槽に、5%食塩水と0.027%塩化第二銅(二水和物)の混合液を噴霧する。


・試験時間:96時間


・試験材料:A2024BD


・試験皮膜:タイプE、タイプF


 

CASS試験96時間後の表面状態

 
  タイプE(評価4) タイプF(評価5)
 

 


【CASS試験96時間における腐食評価基準】

 
 

評価

評価基準(CASS試験96時間)

白錆発生無し

白錆発生面積 10%以下

白錆発生面積 30%以下

白錆発生面積 50%以下

白錆発生面積 70%以下、皮膜割れ有り

 

 


・結論

実証の結果、両タイプとも


1、表面の変色は見られるが、腐食による皮膜の欠落がない。


2、微細ではあるが、発生していた孔食部分がすべて材料素地まで到達しておらず、下層皮膜でとどまっている。


という結果に至り、仮説の立証が成されました。


このCASS試験の結果は、共に社内基準をクリアするもので、実用化するにあたって申し分のない結果でしたが、生産安定性、量産性、コストなども考慮したうえで、タイプFをプロトニクスシステムタフテクトとして採用することになりました。


次回は、プロトニクスシステムタフテクトと、カドミウムめっき皮膜の比較試験結果を報告させていただく予定です。