社長の声
2011年11月11日 金曜日

「金属溶融塩電気化学プロセス」


今、私達が取り組んでいる研究テーマである。


電気化学プロセスにおける水溶液系の電析(電気めっき、無電解めっき)においては、電析できる元素に限りがあるが、金属溶融塩においては、溶融できる金属であればほとんどが電析可能である。


この技術が確立されると、過去不可能であった、C(カーボン)、Li(リチウム)AL(アルミニウム)等の電析が可能となり、用途は無限に広がる。


また、Nb(ニオブ)Ta(タンタル)I(イットリウム)等の希少金属の電析も可能である。


現在、私の通う同志社大学院内に研究室を設け、9月より本格的に研究活動を始めている。


基本動作は、過去我々が蓄積してきた基本技術と近いものがあるとは言え、金属塩をコントロールする術においては比較にならないほど、緻密で高度なテクニックが要求される。


通常、電気化学プロセスにおいては陰極と陽極の二極法を用いるが、金属溶融塩プロセスでは三電極法を用いる。その全ての電極の電位をIC制御により初期電位から最終電位までの電位変化をコントロールし、各金属塩の析出電位を算出しながら電解することが求められる、等電気化学の基礎から「超」応用技術までを駆使した研究開発となっている。



近い将来、弊社本社工場にこれらの生産設備を導入し本格的な製造技術となることを頭に思い浮かべながら切磋琢磨する毎日である。



2011年10月27日 木曜日

雅楽師 東儀秀樹


 


ある時、彼が吹く篳篥の音色を聞いていると、無性に自分も吹きたくなった。


ネットで調べて雅楽専門店を見つけて飛び込んでいって一本の篳篥を購入した。


そうは簡単にいくものではないとは解っていながら「何とかなるんじゃない?」という安易な気持ちもあった。


一生懸命練習して、彼を驚かせてやろう!と頑張ってみた。


結果は「玉砕」・・・・。


音階どころかウンともスンとも音が出ない・・・・。


自分なりに結構頑張ったのだが、肺活量が持たない。


これはもうやっぱり聞く側に回るしかない。


いくらプロであり雅楽の第一人者であるとしても、彼は篳篥だけではなく笙や龍笛、ピアノも弾けばギターもやる。しかも全て一流。


良く考えてみると、千数百年と言う永い歴史に裏付けられた宮廷音楽家としての遺伝子が細胞の中に脈々と流れている彼と比べること自体がまったくナンセンスである。


しかも、彼は忙しい合間を縫ってクラシックカーやバイクを駆り、コンサートをこなし、ドラマの撮影もこなす。


それら全てを彼は心底楽しんでこなしている。これだけ多岐に亘るジャンルを、ここまで楽しめてる人ってそう希には居ない。


これだけ忙しくても「疲れている彼」を未だ見たことがない。


彼は「雅楽とは天・地・空を合わせる、つまり宇宙を創ること。天文の動きを何百年、何千年かけて図り得た統計学に基づいて構築されたものだからこそ自然(宇宙)と人間の調和などが考え抜かれた芸術であるということになる。」と語っている。


彼は宇宙空間を舞いながら、目の前にある興味あること、楽しいと感じること、感性を刺激すること、それら全てを受け入れ、そして楽しみ、そして自分のものにしてしまう、それが彼の才能なのかもしれない。


その才能を駆使して自分の使命を大いに楽しみながら実践する、そんな彼だからこそ為し得る「文化の継承」、それが彼の造り上げた新しい雅楽なのだとつくづく思う。


「温故知新」とは、まさに彼の生き様を表現する言葉にふさわしいと感じるのである。


先人の創り出した良い文化を、今を生きる我々は後世に伝える為の努力を一時も怠ってはならない。


 

2011年10月20日 木曜日

雅楽師 東儀秀樹


 


ある時、彼のコンサート中、今まで体験したことのない不思議な感覚を覚えたことがある。


それは、彼が笙(しょう)をソロで演奏しているときのこと。


会場は山梨県の身曾岐神社の野外コンサートホールだった。ステージの裏には天を仰ぐほどの大きな杉の木が一本あって、彼の演奏が始まると不思議なことに、何度目をパチクリしてもその杉の木しか眼に入らないようになった。


私は抵抗するでもなく、そのまま彼の笙(しょう)の演奏に集中した。


すると、杉の木のてっぺんから一本の光が天に向かってスーっと伸びて行き、彼が演奏する間その淡い青い光が消えることなく心地よく揺らいでいた。


私はその間、何とも言えない落ち着いた、限りなくリラックスした感情にまとわれていた。(後にも先にもあんなリラックスした感情は体験したことがない))


そして彼の演奏が終わると、どの感情から出て来たのか、涙がうっすら頬を伝った。


まわりに悟られるまいとうまくごまかした。


そしてコンサートが終わって、いつもどうり楽屋にお邪魔し、その体験を彼に話したら、いつもの爽やかな表情で「よくあるみたいだよ」と、さほど驚きもしない。


「じゃあ一体あの情景は何だったんだろう?」またひとつ、彼の神秘に興味が湧いた。


後に彼は「雅楽は音楽芸術であるだけでなく、そこには哲学や宇宙感が深く関わっている。


笙の音色は天からの光を、篳篥は地上の音、龍笛は竜の声、つまり空間を象徴している。」と語っている。


鳥肌が立った。あのときの青い光は天からの光だったんだ。


なんか、すごく幸せな気持ちになった。